木漏れ日の散歩道

小鳥が囀り、小川がせせらぐある森の中、木漏れ日が誘うその奥に、ひっそりとたたずむ小さな祠。そこに座ると光が賑わい、楽しそうに躍動し始める至福の一時をあなたに

徳を積もう ~天への貯金~

「自分の機嫌は自分でとれるようになろう」という目標とともに、実はもう一つ別の目標もありました。それが、「徳を積もう」です。徳とは、私の解釈では、人を明るく幸せにしてくれるような行為やその心のこと、という意味です。これを決めるにあたっては、クラスでこんな風に話をしました。

「実はもう一つ、目標を考えてきました。でも、『あいさつをしよう』とか、『遅刻をしないでおこう』みたいな目標を立てても、君らがそんなの守れないって事は先生もうこの4月でよーくわかっている。だから、二つ目はこの目標にしました。『”徳”を積もう』。徳っていうのは、教室で隣の人が落として帰ったゴミを、静かに拾ってゴミ箱に捨てる、とか、挨拶を気持ちよくすることも、徳を積むってことになる。この前掃除していたら、教室の隅に噛んだ後のガムが捨てられていました。もう固まってくっついていて、なかなか取れないんですね。それを、いつも君らの教室を掃除してくれているおばちゃんは、今まで何も言わず掃除してくれてた。ガムを捨てるのは軽い気持ちなんだと思う。でもそれを拾って捨てる人にとっては、とても重いものなんだってこと、想像できますか。

このクラスは結構たくさんの人がアルバイトしてますよね。お金がないという状況の中で、お金を大切にすることの尊さを学んでいる。その経験は人生において本当に尊いことだと先生は思っています。でもお金はいくら貯めても、死んでからあの世には持って帰れない。あの世に持って帰れるものは、自分がした行いと、自分が学んだこと。結局自分が積んだ経験と気づきだけしか持って帰れないってことです。

だから、この世の貯金も大事だけど、天にある銀行に”徳”を貯金しよう。人に明るく優しくして、自分も明るくなるような行いをしよう。それが「徳を積む」ってことです。」

こんな風に話をして、「うん、それもいいと思う」と誰かが言ってくれて、二つ目の目標が決まったのでした。放課後、週に1度は教室の掃除をしていると、おばちゃんがきて、「私の仕事とらんといて、先生」と言いながら、生き生きと率先して掃除をしてくださいます。その姿を見て、この人は徳が高い人だなぁと、頭が下がる思いでした。生徒からの人気も高く、「おばちゃん、おばちゃん」と親しみを込めて呼ばれていることも納得がいきます。きっとこの人は、自分では気づいてなくても、天国にいっぱい貯金がたまってるんだろうな、と、勝手に想像しながら、今も私自身の目標にさせていただいているのでした。


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